
ワインと食事で自分時間を気軽に楽しむ「水上製作所」
地下鉄烏丸御池駅から三条通を西に進むと居酒屋などの大人な雰囲気の店が立ち並んでいる。交差して南北に続く新町通の一本先の釜座通を北に進むと、二階の大きな窓にワインボトルと植物が吊るされたお店「水上製作所」がある。店主の水上さんにお話を聞きました。

おひとり様が気軽に楽しめる場所を作りたかった
――水上製作所のお店ができてどれくらい経つのですか?
7月1日で丸4年になりました。それまでは10年間、京都市役所近くの「CAFE KOCSI(カフェ コチ)」というお店で働いていました。
――独立されたきっかけは何だったのですか?
もともと「CAFE KOCSI」に入る時から将来独立をしたい事を伝えて働かせていただきました。師匠は独立希望のスタッフに対して、将来独立しても困らないように必要なことをたくさん教えてくださいました。
――従業員の思いを汲んでくださる、ありがたい存在ですね。
そうなんです。そういう思いで入ってきた人には師匠が新品の大学ノートを配布してくれ、将来どんな店を持ちたいかなど明確なビジョンを描いて日々取り組むことを進めてくださりました。
――確かにそうすると毎日の手応えや課題が見えてきそうですね。
当時求めていた確かな経験や知識を師匠が与えてくれて日々充実していました。 しかも当時働いていたメンバーで3名ほど将来独立したいという思いの子がいて、刺激しあいながら日々過ごしていたのを覚えています。
――オーナーからすれば、「CAFE KOCSI」で働いていた方が有名になれば嬉しいですね。
そうですね。でもその分ちゃんとしなきゃと背筋が伸びる思いです(笑)。
――では、お店のスタイルについて聞かせてもらえますか?
ワインの飲める洗練されたお店が多いので、それなりにおしゃれやちゃんとした服を来て入るイメージがあるのですが、肩肘を張らずに普段の格好で一人でもナチュラルワインを楽しんでいただける、昼間からやっているカフェのような入りやすい雰囲気でありたいなと思っています。
――そういえば、一人で来られている女性が多くおられますね。
仕事帰りにふらっと立ち寄ってくださる方が多いです。私も共感できるので、そういった方が来られるようなお店にしたくてはじめました。例えば仕事帰りなど疲れていて誰かと喋るのもしんどいかもしれない、一人で来てリラックスできる自分時間のような利用をしてくだされば嬉しいです。

違った形で「水上製作所」を引き継ぐ
――こちらの白ワインとお食事がとてもおいしいです。
ありがとうございます。しらすのセルヴェル・ド・カニュとパンという料理なのですが、たっぷりハーブを練り込んだフロマージュ・ブランとしらすのオイル煮をパンで食べていただく料理で、爽やかで少し酸味のある味わいです。
――練り込んだハーブが爽やか。白ワインが絶妙に合いますね。
オリーブオイルのまったりとした味を引き締めるように、酸味の効いた白ワインをチョイスしてみました。
――ソムリエセレクトの白ワインでさらにお酒が進みそうです。
おすすめはのり塩のグリッシーニです。イタリア発祥でクラッカーのような食感が特徴のスティックです。たっぷりのり塩を含んでいるので食べだすと何本でもいけて結構とまらないですよね?(笑)


――本当に何本でもいけますね。水上さんはワインソムリエでもあられるんですね。
そうです。ワインのお店を始めたかったのでそれを見越して前職の時にソムリエの勉強をし、取得しました。しかし働きながら勉強するのは大変ですね(笑)。
そしてしばらくしてこの場所に「水上製作所」として独立しました。自分の城を構えたかったのでコロナ禍でしたが勢いで飛び出しました。
――そうだ確かに、世はコロナ禍でした。不安はなかったですか?
なくは無かったですがあまり不安は感じていませんでした、やるならこのタイミングかなって。かえって思い切れたのかもしれませんね(笑)。それよりもお店をもって独り立ちしたい気持ちが強かったので。
――日が暮れてきましたがこの空間がとても居心地が良いですね。
ありがとうございます。メインの通りから外れていてこの2階の場所と大きな窓がとても気に入っています。こういった場所で大きな窓があると見晴らしが良くて。
ここはちょっと奥まったとこにあり、通り過ぎそうな場所ですが、まるで隠れ家のようなお店で、そこに来ていただけるということは、目的をもってきていただいているわけなのでとても気に入っています。
――そうですね。そういったことも本当においしいものといい環境を提供できる「水上製作所」だからだと思います。
ありがとうございます。


――ずっと気になっていたのですが、この「水上製作所」という大きな看板は?
こちらは福井で亡くなった父が営んでいた会社の看板です。会社のものはすべて無くなったのですが、これだけはどうしてもといって残しておいてもらいました。いつか自分の店を持った時に使おうと思って。
――そういったエピソードがあったのですね。
職種は変わっちゃいましたがせめて看板は引き継げればなと思って。そんなわけでこのカウンターの天面の高さも看板の幅に合わせてもらったり、店内もどことなく工場を残したような建材を使用しています。
――だからこういった素材だったんですね。最後になりますが今後の展望など何かありますか?
そうですね。展望というあまり大きなことではないのですが、陶芸に興味があるので自分の料理をのせる器を作ってお客さんに提供してみたいですね。自分で調理するものを色合いや大きさなどちょうどいいもので提供できたら面白いかなと思います。


取材中も涼やかなお顔でお話をされていた水上さん。独立までの事や料理のお話、大きな看板の事などたくさん聞かせていただきました。女性のお客様が一人で気軽に入れるお店としてとてもいい空間でまたとてもおいしい料理でした。 (文・写真:山本)
水上製作所
075-286-7761
京都府京都市中京区突抜町793
定休日 火曜日、不定休
営業時間
月・水・木・土13:00〜22:00
金17:00〜22:00
日8:30〜11:00、13:00〜19:00
※掲載内容は取材時のものです。最新情報は念のため店舗公式の情報をご覧ください。