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素材をよく知る砂糖問屋が作る みたらしだんごのお店「樋口清栄門」

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堀川御池に程近い姉小路通と西洞院通の角地にスタイリッシュな白い壁が印象的なお店があります。普段はみたらしだんごのお店を営みながら舞台でも活躍する、とてもアグレッシブな店主樋口みそのさんに話をお聞きしました。

自分が一番好きな和菓子 

――このお店はいつから始められたのですか?

みたらしだんごのお店としては2024年の2月14日にオープンしました。それまでは業務用和菓子の砂糖問屋として、昭和初期の1930年から続いてきました。現在は祖父の名前である「樋口清栄門」として展開しています。  

――ではそれまでは材料の販売だったのですか?

そうです。お客さんとしては出町ふたばさんや鍵善良房さん、都路里さんなどの京都の和菓子屋さん、洋菓子屋さんなど、特に砂糖を中心に今も卸売をしております。ずっと卸売として続けていくつもりだったのですが、2020年からの新型コロナがきっかけでお茶会などのイベントもなくなり、観光客も激減してしまい、得意先がお土産需要がなくなることから売り上げがとても落ち込みました。   

――最初は不要不急の外出禁止でしたね。あの大変な時期がきっかけだったんですね。

人の行き来も制限されましたね。お店さんに売る量がとても減ってどうしようと思っていた時に倉庫を見渡してみると材料はたくさんあるわけです。 
連日のニュースを見ても、緊急事態宣言でお子さんたちが学校へ行けなくなるようなそんな時期でした。おうち時間を過ごす、飲食店もテイクアウトに切り替えるという流れもあった時に、業務用の大袋の材料を小分けにすることを思いつきました。一般の方用に手軽に買ってご家庭で楽しんでもらえるように、例えばわらび餅手づくりキットみたいなのも出しました。  

業務用を小分けにした一般用販売の材料 

わらび餅キット 

――業務用が一般用にですか。思い切った方向転換ですね。 

メインは業務用ですが需要があれば一般のお客さまにも販売もしていました。 

――そうした流れからみたらしだんごに続いていくのですか?

そうですね、人におすすめするからには材料をより深く理解するためにと、以前から和菓子教室に通っていたんです。材料は小分けにして販売、わらび餅キットもできた。でも何か自分で作ったお菓子などを販売できないかなとずっと考えていました。 

――何を売るかは悩みそうですね。

それは悩みました(笑)。それで小さい時からの自分を思い返してみて、あんこの和菓子というよりは、一番好きなのはみたらしだんごで、タレまで残さず食べていたなと。 

――それでみたらしだんごだったのですね。

好きなものだから味や大きさ、どうしたいかなどイメージがつきやすかったです。
印象的だったのは買いに来た子どもたちがお皿を取り合ってタレまですくいあう姿(笑)。  

――老若男女関係なく好きな人が多いと思います。 

スイーツ好きって女性が多いイメージですが、みたらしだんごは意外と男性も買う人が多いんですよ。 

ーー私も好きなのでわかります。お話している間に香ばしい香りと共にみたらしだんごが出来上がりました。タレがとてもさっぱりしていておいしいですね。 

ありがとうございます。2本目、3本目と続けて食べていけるように、タレは甘みとコクがありつつも後味さっぱりするようにいくつかの砂糖をブレンドしています。また団子は国産米粉を100%使用し、冷めてもふわふわ感を感じれるように工夫しました。また小さめに作っており、お子様でも食べやすいようにしています。 

ーー買う人への細やかな配慮をとても感じます。何本から販売ですか? 

観光でフラッと立ち寄る方も多いので気軽に食べ歩きもできるように1本から販売しています。 

みたらしだんご2本で360円。1本(180円)から注文可能。 
みたらしだんごと とろったれアイスクリーム500円
みたらしのタレをアイスにかけて食べるのが店主のオススメ 

笑顔で喜んでもらえることが原動力 

――樋口さん自身のことをお聞きします。宝塚歌劇団にいらしたんですね。 

はい、そうです。もう引退してるんですが、宝塚音楽学校を含めて14年所属していました。 
でも入るまでは全然興味なかったんです。 

――え!そうなんですか。きっかけはなんだったのですか?

姉と姉の友人が宝塚好きで、私も見にいこうと誘ってくれたんですね。でも乗り気でついていったわけではなかったのですが、その時ステージが2列目の席で演者ととても近い場所でした。そんな中、あの大地真央さんが演じられるのを見て体全体に衝撃が走りました。 
なりたい!どうしても宝塚の人になりたいと。 

――人の人生を左右するとても重要な出会いですね!

本当に。でも家族は最初は大反対でした(笑)。それから諦めきれずにいる自分を両親はようやく認めてくれて、そこから高校と宝塚を往復する日々が始まりました。宝塚音楽学校を受験するための受験のバレエ教室があるのですがそれが宝塚にあるんです。 

ーーめちゃめちゃハードな高校生活ですね。

自分でもよくやったなと思いました(笑)。宝塚音楽学校にも何度か受験して受かったんですね。それだけどうしてもなりたくて。 

ーーそれでも誰もがなれるわけではないと思うのですごいです。今は宝塚を引退されていますが、舞台は続けられているそうですね。

そうなんです。引退後は家業の店舗を継ぐため、舞台は続けるつもりはなかったのですが、昔のつながりのあった方からお声がけいただいて、舞台に立つこの感覚が好きだなと改めて思い、店舗の経営もあるので数は限られますが続けています。 

取材中もテイクアウトの注文が。焼いてもらって出来上がる待ち時間も至福の時間 

――樋口清栄門でのお客さんへの販売と舞台とは何か共通することなどありますか?

そうですね、どちらも笑顔で喜んでもらえた時が一番嬉しいです。
「おいしい!」とこどもが食べている姿は格別ですね。また舞台での「ありがとう」「よかったよ」のお客さんの言葉も私の原動力になります。 

定期的にイベントへ参加されております。 

――最後になりますが、今後のことなどお聞かせください。 

今はみたらし団子に限らずどんどん違うものにも挑戦していきたいし、少しずつイベントのPOP UPショップにも出させてもらったりして続けていきたいです。
ですが、まずはいろいろな方に食べてもらいたいと思っています。砂糖問屋がちょっとこだわって作ったみたらし団子を知っていただけたら嬉しいです。 

店舗経営と舞台にととてもアグレッシブな店主の樋口さん。取材や撮影中で接客を交えてもとてもにこやかでおられましたが、その背景には学生時代での並々ならぬ努力であったであろうことをお話を聞きながら感じました。
またその姿勢が材料をよく知る砂糖問屋がこだわって作ったみたらし団子の開発に繋がったのではないかと思いました。そんな樋口清栄門さんでいただいたみたらしだんごとアイスのセットが個人的なおすすめです。(文・写真/山本)
 

樋口清栄門店主 樋口みそのさん

京都市出身。1988年宝塚音楽学校入学(76期生)、1990年宝塚歌劇団花組男役として12年在籍。退団後は「大奥」「暴れん坊将軍」「マツケンサンバ」「忠臣蔵」「山村美紗サスペンス」などのテレビ、舞台に多数出演。趣味は食べ歩きや旅行。また体を動かすこと。 

樋口清栄門 

075-221-0488 
京都市中京区姉小路通西洞院西入 三坊西洞院町555  
定休日 不定休
営業時間 
11:30〜18: 00※売り切れ次第終了。

※掲載内容は取材時のものです。最新情報は念のため店舗公式の情報をご覧ください。