
東京・下北沢で人気の2号店が京都に「カレー食堂 茄子おやじ 花レ」
三条室町通りを歩いていると見えてくる、可愛い暖簾とインパクトのある店名。その名も「カレー食堂 茄子おやじ 花レ」。東京・下北沢を代表する「茄子おやじ」の2号店です。東京よりも広いという店内は食欲をくすぐるスパイスの匂いが漂い、スタッフが選曲している音楽を楽しむことも。京都出店を決めた理由や店づくりへの想いを店主の松本怜さんにお聞きしました。
「茄子おやじ」の縁が繋いだ2号店
――「茄子おやじ」さんは東京・下北沢を代表するカレー屋さんとお聞きしました。
今年36年目のカレー屋です。二代目の店主が引き継いで9年目になりました。もともと僕もカレーが好きで、大学生の頃に「茄子おやじ」でアルバイトしていたんです。最初はチェーンのカレー店で働いていたんですが、チェーン店だとルーを作る過程が分からないので、「個人でお店を経営しているところで働きたい!」と思い、先代店主のもとで働きました。当時は下北沢に住んでいたんですが、「茄子おやじ」はすでに人気店でしたね。

――そういうご関係だったんですね。アルバイトしているときから、「自分のお店を持ちたい」と考えていたんですか?
いえ、お店を持ちたいな、と思うようになったのは、そのあとです。実は僕、一旦バイトを辞めた大学卒業後、東南アジアを中心にインドやミャンマー、ワーホリでカナダ、アメリカなど世界を旅して回っていた時期があったんです。トータルで1年半ほどですかね。旅から帰ったあとに「自分でもカレーのお店をやりたいな」という思いが募り、再び「茄子おやじ」で働かせてもらいました。
――世界を旅されていたんですね。海外へ行きたいというきっかけはあったんですか?
思い出に残っているのはスリランカですね。街のレストランでもカレーを食べましたが、宿のお母さんが夕飯にカレーを作ってくれて。そこでカレーの作り方を教わったんです。スリランカカレーはココナッツが重要で、いまお店で出しているカレーとはスパイスなどは異なるんですが、現地の作り方を目の前で教わった経験や知識は活かされています。

――現地の方から直接教わるのは貴重な経験ですね。自分のお店を持ちたい、と再び「茄子おやじ」で働かれたとのことですが、そこから京都に2号店を出すことになったきっかけなど教えていただけますか?
最初は自分の店を持つために「茄子おやじ」で修業していました。アルバイト時代は仕込みや接客が中心だったんですが、修業時代は食材の分量やスパイスの配合などカレーづくりに関することを学びました。約1年の修業期間を経て、妻の出身地である京都に引っ越したんです。出店を模索していたんですが、コロナ禍や子育てが重なってなかなかタイミングが合わず…。
――2号店オープンに合わせて京都に来られたのかと思っていたんですが、もともとこちらにお住まいだったんですね。
そうなんです。自分の店を持つ夢を抱きながらも、子育て中は子どもとの時間を大切に過ごしていました。で、子どもが保育園に入るタイミングでそろそろ自分のお店を持ちたい、と。そんななか、茄子おやじの二代目店主から「2号店を手伝ってくれないか」と打診があったんです。
――えっ!そんな経緯があったんですね。すごいこ゚縁ですね。
はい。店の出店で悩んでいた時期に大好きな茄子おやじから2号店のお話をいただいて嬉かったですね。あとは、夜の部(店名:yokukka。同じ場所で名前を変えて営業している茄子おやじ花レの夜の部)の店長も下北沢の茄子おやじで働いていたスタッフなんですが、そのスタッフが京都に移住するタイミングだったのが大きいです。そういう経緯もあり、京都に2号店をオープンさせました。
下北沢の良さは残しつつ、京都ならではの店づくり
――京都店では下北沢店と同じカレーを提供されているんでしょうか?
ベースは二代目店主が作ったものです。スパイスの分量は変えてはいませんが、京都店オリジナルのアレンジを加えています。

――作り方の特徴は?
約10時間かけて玉ねぎを炒めているんですが、それがカレーのベースになっています。弱火でしっかり飴色になるまで。営業中はずっと炒めている状態です。そこに約20種類のスパイスとお肉の出汁、野菜やフルーツなどを加えて味を整えていきます。
――スパイスのなかにも甘みを感じるのは玉ねぎとフルーツが利いているからなんですね。メニューについても教えてください。
カレーのソースは一種類で、トッピングを選んでいただくことができます。店内で煮込んでいる大鍋は一つなんですが、オーダーごとに小鍋で煮込み直しています。一番人気はスペシャルで、おすすめはビーフカレーですね。今後はトッピングやセットメニューを変えるなど、お客さまからの要望に柔軟に応えていきたいと思っています。

――お肉がとろとろでとても美味しかったです。カレーと一緒にコーヒーやレコードを楽しめるのも茄子おやじの特徴でもありますよね。
そうですね。コーヒーは京都・北白川のみ空さんの豆を使っています。深煎りで濃いめの味わいなんですけど、カレーにとても合うんです。レコードに関しては、先代店主時代も店内で音楽をかけていたんですが、ミュージシャンでもある二代目店主に変わってからより力を入れるようになりました。京都店のスタッフも音楽好きな子が多いので、自分で持ってきたレコードや下北沢から送られてきたものを店内で流しています。

――センスの良い音楽がずっと流れていますよね。京都店ならではの取り組みとかはあるんでしょうか?
実は京都の店舗は下北沢の店舗よりも約3倍は広いんです。二代目と物件探しをしていたときは、もっとコンパクトな店舗を検討していたんですが、この場所を見たときに「ここならライブが出来るね」となって。想定よりもスペースが広いので、僕たちにもチャレンジングではあったんですが、こっちのアーティストとの輪も広げていきたいな、とこの場所で2号店をオープンすることに決めました。

居心地の良さを重視、地元に根付いていきたい
――松本さんにとってカレーづくりの面白さってなんでしょうか?
スパイスや食材の組み合わせがカレーを作る面白さだとは思うんですが、茄子おやじの場合はルーが一種類で先代や二代目が作ってきた味を守り続けています。その上では、お客さんとの触れ合いやスタッフとのやり取りで楽しさを感じますね。
――お話をお聞きしていても、仲の良さが伝わってきます。今後の展望などを教えていただけますか?
今後は接客の方にも力を入れていきたいと考えています。もちろん美味しいカレーを作りながら、お客さまにとって居心地の良い空間を提供していきたいです。また来たいって思ってもらえるような接客を心がけていますね。先ほどもお伝えした通り、京都店は店内が広いので、下北沢では出来ないことにどんどんチャレンジしていきたいです。今はモーニングを始めたり、スイーツ・カフェの時間も強化したりしています。
――いろんなことにチャレンジしながら、京都店らしさを出されているんですね。
そうですね。喫茶店が多い京都だからこそ、欧風カレーを求めて年配のお客さまがリピーターでついてくださっているんです。オープンして1年ちょっと経ちましたが、これからもコツコツと地元に根付いていけるよう良い店づくりを続けていきたいと思います。

お忙しい時間にも関わらず丁寧に取材を受けてくださった松本さん。経験豊富でお話上手なので、カレーやお店のことだけでなく、世界旅行や趣味であるNBAのことまで聞いてしまいました(笑)。居心地の良い空間で美味しいカレーが食べたい際はぜひ立ち寄ってみてください!(文:西井、写真:山本)
カレー食堂 茄子おやじ 花レ
075-744-0440
京都市中京区室町通三条下がる烏帽子屋町485メニービル1F
定休日 不定休
営業時間 午前8時〜午後5時
※掲載内容は取材時のものです。最新情報は念のため店舗公式の情報をご覧ください。