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いちばん身近な贅沢を贈る文具店「TAG 本店」

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烏丸通。京都を南北に走る目抜き通りに、文具店「TAG」の本店があります。その運営母体である竹田事務機は、2026年に創業40周年を迎えましたが、創業者で社長の竹田登さんは「それでもまだまだ新参者」と、TAGと京都の「これから」について教えてくれました。

烏丸への出店は、信号待ちから始まった。

——烏丸に店を出すことになった経緯から聞かせてください。

もう20年以上前ですけど、よく覚えていますよ。日曜日に車を運転していてね。烏丸通を南から上がってきて、ちょうど信号で今の店の前に止まったんです。ふっと見たら、1階のテナントから会社が引っ越ししているところで。思い切ってビルに電話しました。「1階、空くんでしょうか」って。

——烏丸通の一等地との出会いは、幸運な偶然だったんですね。

幸運だとも言えますが、同業者からは「やっていけるわけがない」「必ず潰れる」とまで言われましたよ。ご想像の通り、家賃も条件も軽くない。もちろん不安もありましたし、最初の支払い額を見た時は「竹田事務機もここまでか」と思いましたよ(笑)。でも結果として今、ここがTAGの顔になってくれています。

とてつもない苦労も笑って話してくださった。

人は、人からものを買う。これまでも、これからも。

——今では、京都をはじめ関西のあちこちに店舗が広がっています。

おかげさまで。もちろん、やってみてわかったこと、後から気づいたことは山ほどあります。今になって「もっとこうしとけばよかった」が、ようやく整理できてきた感覚もありますね。

——昨今は、店舗を持つリスクを避けてECに力を入れる流れもあります。そんな中で、実店舗に軸足を置く理由は?

私はね、「人は人から物を買う」、それは変わらないと思ってるんです。仕組みが便利になるほど、売り手と買い手の間に見えないブラックボックスが増えるでしょう。便利なのは確かです。でも、見えないところを嫌って、人から買うことに価値を感じる人も必ずいるんです。

——コロナで一気にオンラインに寄るかと思いきや、街の賑わいは戻ってきました。

そう。オンライン一色になったら戻らないと思われていましたが、この2、3年の戻り方はすごい。みんな、買い物に出かけたいんですよ。ものが欲しいだけじゃなくて、手にとって、友だちや店員と話して、悩んでレジまで持っていきたいんです。

ペン一本でも、多種多様。悩む時間も価値のひとつ。

——買い物という体験を大切にされているから、TAGも実店舗に力を入れていると。

文具って、実は生活を豊かにする「いちばん身近な贅沢」なんですよ。ちょっといいペン、ちょっといいノート。服や鞄みたいに大きな買い物じゃなくても、手元が変わるだけで気分が上がる。そういうものを買うときに、写真だけで、ボタンひとつで、では、満足できないと思ってしまいますね。

文房具はいちばん身近な贅沢。

京都の伝統産業とのコラボで、一緒に道を開きたい。

——今後の展望として、京都の伝統産業とのコラボを強めたい、と。

この烏丸に、店と事務所を構えている理由にもなりますね。京都にはやはり、ここにしかない価値がまだまだある。伝統産業なんてまさしく、ですね。時代の波を前に元気を失っているものもありますが、だからこそ、そういう伝統とコラボレーションして、メイドイン京都の価値を再発掘していきたい。

——伝統産業×文具は、確かに相性がいい気がします。

文具や雑貨は、素材や手仕事、意匠の世界とつながりやすい。布、革、木工、紙……。どれも日常に近しい手触りのあるもの。伝統産業は、高い技術を求められるため高価なものも多いですが、文具に落とし込めばもっと魅力が伝わると思うんです。なんと言っても、文具は「いちばん身近な贅沢」ですから。

TAG本店に並ぶ、伝統産業とのコラボ商品。

——すでにその方向へ動いている?

2018年に、TAG STATIONERYという会社を立ち上げてね。京都の技術とコラボして文具を生みだすメーカーです。いくつかブランドも立ち上がりましたが、それでもまだまだこれからです。伝統産業の格式もありますから。ブランディングも含めて、がんばっていますよ。経営者としても、会社としても、私たちは新参者ですから。挑戦、挑戦ですよ。

筆者も中学時代に足繁く通っていたTAG。友達とああだこうだと言いながらシャーペンを選んでいた思い出も、体験を重視する経営哲学に繋がっていたみたいです。そんなTAGが次に望む景色。期待せずにはいられない、取材終わりの帰り道でした。(文:大村、写真:山本)

竹田事務機 代表取締役社長 竹田 登さん

休日の楽しみは、琵琶湖でのヨットで、チームを組んでレースにも積極的に参加。季節に関係なく望んでいるが、あまりに寒すぎるとメンバーが揃わない日も。

文具店TAG 本店

京都市下京区薬師前町707 烏丸シティコア1F
定休日 年末・年始 12/31〜1/3
営業時間 平日:9:30〜19:30、土・日・祝祭日:10:00〜19:00


https://www.takedajimuki.co.jp/

※掲載内容は取材時のものです。最新情報は念のため店舗公式の情報をご覧ください。