自分を最高に表現できるもの。書家・アーティストHILOKI
ゴールが無い事が面白い!いつまでも進化あるのみ
書家・アーティストとして活躍しながら、四条烏丸で書道教室も開いているHILOKIさん。世界的に有名な書家「祥洲(しょうしゅう)」先生のお弟子さんでもあり、ご本人もレッドブルや、阪神タイガース、京都サンガとのコラボ等、大活躍中!既存の書家のイメージを覆す、今時の風貌。その芯にある、熱い書への思いをお聞きしてきました。
スポーツ選手のように憧れたヒーロー、書家「祥洲」
――始めたきっかけは何だったのですか?
祖父、祖母の3人家族だったんですが、「誰も字が綺麗に書ける人がいないから、あなたが頑張りなさいっ」と、祖母が近所の書道教室を勧めたのがきっかけでしたね。小学校1年生の時です。そこで出会ったのが、現在の師匠である祥洲先生でした。
(書家「祥洲」:大河ドラマ軍師 官兵衛のタイトルや近年はフェラーリとのコラボなど)
――ずいぶん幼い頃に祥洲先生にお会いしてたんですね!
そうなんです。巡り合わせですかね!習い始めた当初は近所の書道教室の先生って感じだったんです。おもろいおっちゃんやなーと思っていて(笑)。それが僕が中学校に行く頃ですかね、どんどん有名になっていって、ベンツのCMやお菓子のパッケージ、個展や展覧会活動など、どんどん活躍されるようになってきて。そこに僕は一番惹かれましたね。「書道」を職業として意識し始めました。みんながサッカー選手や野球選手に憧れていたように、僕にとってのヒーローですね。今でも先生のところに習いに行っていますよ。週一回。32年ほど続いています。
――32年も通っているんですね!書道の楽しさはどういったところですか?
書道で一番魅力なのは、ゴールが無いことですね。習ったことを出来るまでも長いんですが、できたと思っても、また次こんなことも出来るんだって。ちょっとした技や筆使いなんですけどね。祥洲先生にとってまだまだ僕は「生徒」なので、この歳になっても学ぶことが多いです。っと言うことは、ゴールなんかまだまだ先で終わりがないんですね。それが楽しいですね!僕もずっと進化できるし、目指している祥洲先生も進化するし。あとは僕が頑張ってどれだけその距離を縮められるかですね。
師匠が信頼してくれた。だから僕も生徒を信頼してるんです。
――プロとして活躍する傍らで、四条烏丸で滴游会(てきゆうかい)という書道教室も開いてらっしゃいますよね。どんな教室でしょうか?
そうですね、四条烏丸・南草津・名古屋でやらせてもらってます。
大人から子供まで習いにきてくれるんですが、他の教室と違うのは、一番は個性を大事にするように、伸ばせるように育てていますね。僕がそうしてもらったので。一人一人の個性を見分けて、その子の良いところを伸ばしていくようにしてます。ここができていないからと、直すように教えると個性を潰し、みんな同じ字を書くようになるので。
――おもしろい教え方ですね!書道は決まった文字を書くというイメージがあったので。あと、HILOKIさんは生徒さんとの距離感も近いですよね?
そうですね、生徒と先生の信頼関係を大事にしようと心がけているからだと思います。
教室では学校や家庭では見せない顔を見せる時もあるので、気になったら親御さんに連絡して「最近どうですか?」と色々お話をしたりしています。
あと生徒たちともいろんな話をしますよ。小学校から通ってる子が、もう中学校になるんですが「先生、僕最近彼女出来たよ!」っと、家でも話さないことを聞かせてくれたりしますね。あんな小さかった子が、今は彼女のことを相談してくれるのは嬉しいですね!
他にも学校で上手くいってない子がいて、登校拒否をしていたんですが、僕の教室には来てくれるんですね。リラックスして字を書き、そして色んなことを話してくれる。そんな近い距離にいられることが、僕も嬉しいし、信頼関係を築くことを一番大事にしてますね。そう言う関係を築くのは時間がかかるので、まずは入会時になるべく1年続けてくださいと、お願いしています。
――そうですかプライベートのことまでも…。なかなかできる事では無いですし、生徒想いで良い先生ですね!
いえいえ、僕が良い先生に育ててもらって、唯一書道だけは続けてこられました。
あと僕は、書道から人付き合いや礼儀など全部学びましたね。祥洲先生が信頼してくれたから続けてこられましたし、だから僕も生徒を信じ、信じてもらえるように心懸けています。
今は手書きの文字って、どんどん淘汰されているので、例えば手書きで手紙をもらったりすると、すごく嬉しいと思うんですね。教室にきていただいた方には、たくさん書いてもらい書道を通じて、手書き文化の魅力を感じてもらえればと思っています。
作品作りはジャンルレス。でも根本は「書」
――先生としてだけでなく、アーティストとしても活躍していますが、また別の顔のHILOKIさんですね。これからどんな作品作りをしていくのでしょうか?
そうですねぇ…。オリジナルを探し続ける。自分自身が100%表現できる作品を作っていきたいですね。
僕の考えですが、ジャンルレスに人ってどんな作品を作っても良いとは思うんです。写真家が絵を描いても良いと思いますし。ただどんな作品を作るにしても、僕の場合は、書が根底にないと書家とは言えないと思っています。画家が書く線と、書家が書く線は全く違います。できる作品についてはジャンルレスで良いと思うんですが、伝統・文化を大事にし、書を根本に置き表現しています。
――色んな活動をしても、基本の書を大事にしているんですね。書として、アートとして色んな側面がありますが、どう言うことを伝えたいですか?
アートに正解はないので、誰か一人でも”何か感じられるもの” があるのがアートだと思っています。何でも良いんです、かっこいいでも、怖いでも、何か気になるとか!自分がかっこいいと思うものを世に出して、世に問う。賛否の論争が出るものが一番良いと思います。誰しもが見てキレイと思うものより、人の心に引っかかる様なものが良いですね。作り手がどう思って作ってるか、感じ取ってもらえたら嬉しいですね。
あと作品作りは、何回も何回も書き直したりしないですね。ここぞと言う時に、一発で書けるように日頃、精神力を鍛錬しています。その精神力を養えるのは、書道が一番と思っています。
書道はミリ単位で、表情が変わってくるので、自分が思い描いていたものを書くのは相当難しいです。少しでも思い描いてたものと違う太さ、長さになってしまったらその後どうするか、全体のバランスなども見て常に判断して書いていますね。線に、精神性・意識をもって書かないと何も伝わらないですから、本当に全集中して書いています。
――少し他のこともお聞かせください。書道家になってなかったら何をしていましたか?
学校の先生ですかね、教員免許も取得していますし、子供も好きなので!一度大手企業に勤めたこともあります!それで、すぐにローンを組んで、親代わりに育ててくれた祖母の家の近くにマンションを買いました。1年で辞めちゃったのですが、大手企業だったので卒業して、すぐローンを組めたのは良かったです!そこからは大変でしたが(汗)。
今は結婚して子供もいるのですが、祖母のところへは一緒にご飯を食べたり顔を見に行ったり、ほぼ毎日通っていますね。もう高齢で、本当に大切な人なので近くにいられて良かったです。
――お子さん達も書道を?
子供達も祥洲先生に習っていますね。僕が子供の頃よりめちゃくちゃ上手です(笑)
――HILOKIさんも教えるのですか?
僕はお父さんでいたいので、教えたりはしていません(笑)後ろで見ていて、そこは…と何か言いたくはなるのですが、言わないようにはしてます。
――作品作り見せていただきましたが、ものすごい気迫を感じました。ではHILOKIさんにとって書とは?
自分を最高に表現できるものですね!
私も昔、書道を習っていました。何かを表現すると言うよりは、堅っ苦しく、今思うと親に行かされていたという感覚でしょうか(汗)。もちろん、礼儀礼節も作法なども学べすごく大事ですが、子供の私には楽しくはなかったです。ただ、自分を表現できるツールというように感じ取れた今、HILOKIさんのような先生だったら面白く続けていたのかな?と、取材後に思ったりもしました。
元々イベントを一緒にしたり知り合いなのですが、話していて気さくで、熱く、あたたかい人ですね。これからも、作品を楽しみにしています! (文:奥谷/写真:木村)
書家 HILOKIさん
1983年生まれ、京都市出身。趣味はカラオケ、バレーボール。京都、滋賀、愛知で小学生〜一般の方まで通う書道教室、滴游会HILOKI書道教室を主宰。阪神タイガーススローガン揮毫など活躍中。 2010年第二回顔真卿国際書法展第一席西安碑林館長賞などの受賞歴あり。
滴游会 HILOKI書道教室
ウィングス京都教室
京都市中京区東洞院通六角下る御射山町262
TEL 090-8880-9339
開講日 毎週月曜日、火曜日(月3回)
https://tekiyukai.com/
※掲載内容は取材時のものです。最新情報は念のため店舗公式の情報をご覧ください。