
素敵な作家との出会いの場に、「住む街でアートを楽しむ。」
東洞院仏光寺を少し下ると見えてくる、緑に囲まれた白い建物。ガラス扉越しに中を覗いてみると、「可愛い」をぎゅっと閉じ込めた素敵な作品の数々が並んでいます。ここは、日本国内の作家作品を集めたセレクトショップ兼ギャラリー「住む街でアートを楽しむ。」。店主の渡部宏さんにお店を開いたきっかけやアート作品への想いを聞いてきました。
より深く丁寧に、作家の魅力を伝えたい
――住む街でアートを楽しむ。さんとSinQの事務所徒歩30秒くらいの距離なんですよね。以前から気になっておりました。
そうだったんですね。すぐお隣の路地なんですよね。
――そうなんです。これもなにかのこ゚縁ということで、取材することが出来て嬉しいです。ではさっそくですが、オープンの経緯などを教えていただけますか。
オープンは2023年9月29日です。お店を開いたきっかけは店名(住む街でアートを楽しむ。)通りなんです。自分たちの好きな街で路面店を開きたい、日本の素敵な作家さまを紹介したい。そういった想いから妻と二人でお店をオープンさせました。国内外から来られるお客さまに日本の作家さまの魅力をより深く丁寧に伝えたいと思っています。

――奥様も同じような想いをお持ちだったんですか?
そうですね。自分たちの好きな街に住んで、そこで商売が出来て、皆さんが喜んでくれたら理想的だなって。じゃあチャレンジしてみよう、とこのお店を開きました。
――店名もロゴマークも素敵ですよね。どなたが考えたんですか。
店名は妻と二人で。ロゴマークも私たちの手書きなんですが、一番出来栄えの良い妻のものをチョイスしました。

――とても素敵ですね。京都という土地を選ばれたのにはなにか理由が?
単純に京都に住んでみたかったんです。オープンの半年前くらいに引っ越しました。それまでは僕は東京、妻は大阪に。京都には何度か遊びに来ていたんですが、楽しい街だな、と思っていて。
――もともと京都にゆかりがあったわけではないんですか?
特になかったですね。楽しそうな街なので、商売が出来たら楽しいな、と思って。土地勘がなかったんですが、細長くて広めの場所が良いな、という構想はありました。たまたま一軒目に見つけたのがこの場所だったんです。もともと1階は畳屋さんだったみたいで。そこを自分たちで改装して、いまのかたちになりました。
年間100人超の作家とやり取り
――店内を見させていただきましたが、可愛い雑貨や展示がいっぱいで見ているだけで楽しいです。店内はグッズ販売スペースと展示スペースがあるんでしょうか?
そうです。アートや陶器、文房具やアクセサリー、お洋服など、いま注目の作家さまの作品を多数そろえているほか、展示用のギャラリーを設けています。ギャラリーは全部で5つあって、月替りで作家さまを入れ替えています。展示以外は基本的に常設です。

――作家さまはどうやって見つけていらっしゃるんですか?
さまざまですね。(出身地の)大分県の郊外でやっているフリーマッケットに出向くこともあれば、大規模なアートフェスへ行くこともあります。あとは、作家さまがほかのアーティストを紹介してくれることも。「作家さまを見つけること」が僕たちの仕事なので、これからも自分たちが素敵だと思った方とお客さまをつなげていきたいです。
――ギャラリーで展示されている作家さまも同じように?
そうです。僕達がお声がけして展示させてもらっています。5つのギャラリーそれぞれに個性が出るので、全体を通して楽しんでもらえるような工夫はしています。
――作家さまは日本の方が多いんですか?
日本の方ばかりです。年間でだいたい100人くらいの方とやりとりしていますね。
――100人!すごいですね。いつ来ても新しい作家さまに出会えそうですね。作家さまを見つけるときのこだわりやポイントなどはあるんでしょうか?
あえて統一性をもたせない、というルールは設けています。季節感などもあまり意識していないですね。「アートギャラリー」という切り口なので、絵画や陶器は多いですね。


人の好みには「幅」がある、これからも感性を研ぎ澄まして
――渡部さんのことについてお聞きしたいんですが、いつ頃からアートに興味を持つようになったんですか?
学生の頃から洋服が好きで、必然的に絵画にも興味を持つようになりました。大学を卒業してからはアパレルメーカーでディレクターを経験し、その後独立しました。
――ご自身で制作するよりは、アーティストを発掘することに魅力を感じたんでしょうか?
自分でブランドを作っていた時期になかなか売れない歯がゆさを経験したんですよね。もっとみんなに知ってもらえたら売れるはずなのに、もっとチャンスが広がったはずなのに。そういった思いがずっと残っていて。だから、きらりと光るものを持った方々を見つけて、いろんな方に深く知って欲しいなと思っています。
――まさしく渡部さんの想いが詰まったお店ですね。
作家さまとの出会いの場をいかに偶然に作れるかが重要だと思っています。SNSやECサイトは好みのものがすぐに流れてくるけれど、実店舗だとこれまで見てこなかった作風の作品に出会うことが出来る。「趣味ではなかったけれど心に響く」こともたくさんあるので、この感性を研ぎ澄ませていきたいです。人の好みには幅があるので、いろんなテイストの作家さまの作品が見られるよう、出会いの場をいかに偶然に作れるかを大切にしています。
――趣味ではなかったけれど見てみたらはまった、という経験、私もあります。今回は貴重なお話をありがとうございました。では最後に今後の夢や目標を教えていただけますか。 目標は地道に続けることです。より多くの日本の素敵な作家さまを、いろんな方に届けていきたいです。僕達自身もしごとを楽しみ、皆さんに幸せな生活のヒントになるものをこれからも提案していきたいです。

以前から気になっていた「住む街でアートを楽しむ。」さんにようやく取材することが出来ました。グッズや展示の内容はもちろんレイアウトも可愛くて楽しくて、ついつい長居してしまうお店です。店主の渡部さんからは作家さまに対する愛情を感じられ、このお店が親しまれる理由が分かった気がします。四条烏丸エリアに来られた際はぜひ立ち寄ってみてください。(文、写真:西井)
※掲載内容は取材時のものです。最新情報は念のため店舗公式の情報をご覧ください。