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フレンチ一筋三十年、プロの味をホテルで気軽に

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国内外から多くの観光客が訪れる京都の中心地、利便性の高い四条烏丸に位置するホテル日航プリンセス京都。宿泊せずともレストラン使いとして気軽に利用できることを知っていましたか?6つあるレストランやバーは生産者の想いに寄り添い地産地消に取り組んでいるお店ばかり。そのうちのひとつ「カフェ&ダイニング アンバーコート」の料理長・西村誠介さんにお店のことや今後の展望をうかがってきました。

料理人に憧れ、高卒で京都のフレンチ店へ

――ではまず料理人になろうと思ったきっかけを教えていただけますか。

テレビのドキュメンタリーを見たのがきっかけですね。ラーメン屋で働く若手の苦悩と葛藤を紹介していたんですが、その特集番組を見て「飲食店良いな、料理人になりたいな」と思って。なので、もともとはラーメン屋になりたかったんです(笑)

――ラーメン屋からのフレンチシェフとはかなりの方向転換ですね(笑)

ラーメン屋に憧れていたので、高校のときはラーメン屋でアルバイトをしていたんです。アルバイトを通して「料理を作って食べてもらうこと」に楽しさや喜びを感じ、この世界で頑張っていきたい、と思うようになりました。

――たとえば、どういったところに楽しさを感じたんでしょうか?

自分が作ったものを食べていただき、「おいしい」と感じてもらうことはもちろんなんですが、バイト時代に初めてお会計したときに、お客さんに握手を求められたんです。自分が作ったもので喜んでもらえることが嬉しくて、当時ちょっと泣きそうになりました。こうやってお客さんと話す機会があるのも、喜びや楽しさのひとつですね。

――素敵なエピソードですね。そこで料理人になる決意を新たにされたんですね。高校卒業後は料理学校などに通われたんですか? いえ、高校を卒業してからは京都市内のフランス料理店に就職しました。調理経験は家庭科の実習程度で、家で料理を作ることや洋食を食べに行く機会も多くはなかったのですが、たまたま目についたのがそのお店だったんです。そこのハンバーグを食べたときに、「こんなに美味しいものが世の中にあるんだ」って衝撃を受けまして。そこからは洋食一本でここまで来ました。夢だったラーメンとは全く関係のないところで働いています(笑)

料理の仕上げをする西村料理長

――実務で経験を積まれてきたんですね。そのフレンチ店では何年くらい働かれたんですか?

二十四年ほど修業を積ませていただきました。

――二十四年!ホテル日航プリンセス京都さんに入社されたのはいつ頃なんでしょうか?

コロナ禍の2020年頃ですね。長年ひとつの会社で働いてきたこともあり、自分の力がどこまで通用するのか、新しい環境で自分の実力を試してみたくなったんです。

もともとホテル日航プリンセス京都の総料理長と顔見知りだったこともあり、ご縁があってこちらにお世話になることになりました。

――新天地へ行くにあたり、洋食以外の道は考えなかったんですか?たとえば夢だったラーメン屋に挑戦したいとか…。 自分は不器用なので…(笑)洋食、フレンチしか頭になかったですね。たまたま飛び込んだフレンチの世界ですが、やっていくうちにフレンチが好きになりました。この年齢で違うジャンルに挑むよりは、培ってきた経験を活かして違う環境で挑戦したいと。

ホテル日航プリンセス京都店内。正面左手にアンバーコートの出入り口が

地元の野菜にこだわり、素材を活かす

――では、ホテルでのお話をおうかがいしていこうと思います。最初から料理長として入社されたんですか? ゆくゆくは、とお話を聞いていましたが、そこまでこだわっていたわけではありません。お声がけいただいた際に、「まずはアルバイトさせてください」とアンバーコートでバイトをさせてもらいました。その経験を踏まえ、このホテルで働きたいな、と。入社してからは宴会なども担当し、そのあとにアンバーコートの料理長に就任しました。

アンバー(琥珀)柄の絨毯が素敵なアンバーコート店内

――得意料理を教えていただけますか?

フルコースでは、メイン料理の肉料理ですかね。肉料理は頭にぽんとレシピが浮かんできます。

おまかせコースの一例、牛フィレのグリエ

――創作もされるんですか?

そうですね。野菜も自分で農家さんに買い付けに行きます。食べて一番衝撃を受けた鷹峯の農家さんから仕入れています。

――地元の野菜にこだわられる理由は?

新鮮で味が濃いからですね。料理も、野菜の味や素材の味が引き立つような調理を心がけています。ソースに関しても作り込みすぎず、シンプルに作って、双方の味を大事にしたいと思っています。

――ご自身で目利きし、自信を持って提供できる素材を使われているんですね。そういえば、食育にも取り組まれているんですよね。

ホテルからすぐ近くの洛央小学校へ行き、食品ロスに関する講義をさせていただきました。捨ててしまう食材を使って子どもたちとフレンチ料理を作りましたね。自分の勉強にもなりましたし、子どもたちとお話できるのは楽しかったですね。

美味しさを追求できる、フレンチの魅力

――西村料理長が考えるフレンチの魅力はどんなところですか? どの料理も共通するかとは思いますが、同じレシピでも調理する人によって味が変わることですね。その人の経験や感性によってまったく別の料理が出来上がる。自己満足に近いんですが、味を追求し、のめりこめるところがフレンチの魅力だと思います。

鮮やかな手つきで盛り付け

――なるほど。シェフによって「完璧」と思う加減が違うから味が変わるんですね。

そうですね。焼き加減や、ソースを煮詰める時間などによって味が変わるんです。何秒煮詰めるか調理中の判断や絶妙の加減が面白くて、「今だ!」という瞬間に仕上げてお客様に提供する。そこがフレンチの魅力ですね。各シェフの「味」を知れることがフレンチの面白さだと思います。

――ものすごく勉強になりました(笑)経験を積まれてフレンチの知識を深めていかれたんですね。

経験といえば、料理コンクールに挑戦できたことも自分のキャリアのなかでは大きいですね。新卒で入社した会社では、コンクール参加を推奨してくれていて。フレンチコンクール「メートル・キュイジニエ・ド・フランス“ジャン・シリンジャー杯”」は2004年大会のファイナリストに残ることができ、「ボキューズ・ドール2009」では国内予選の準決勝まで進むことができました。

コンクール出場に最初は気乗りしなかったんですが、初挑戦で思うような結果を残せなかったんです。その悔しさと挫折があったからこそ、フレンチの面白さを味わえて、料理を追求するきっかけになりました。

――貴重なお話ありがとうございます。最後に今後の夢についてお聞きしても良いですか?

自分自身も勉強しつつ、自分が培った経験やレシピを次世代に伝えていきたいですね。成功例だけじゃなくて失敗談も。

アンバーコートでは一皿から季節を感じ、京都を味わえるスタンスのもとお料理を提供しています。地域のお客様の利用も多いので、ランチは特に気軽に来店してください。複雑に作り込んだフレンチというよりは、野菜や素材の美味しさが分かりやすく伝わるようにシンプルに作っているので、日常使いできるレストランです。今後も、素材の味を大事にしつつ、料理を通してお客様に喜んでもらえるよう、美味しく食べてもらえるよう、フランス料理の魅力を伝えていきたいです。

ホテル日航プリンセス京都

ランチタイム前というお忙しい時間にも関わらず、とっても気さくにお話してくださった料理長の西村さん。お話も上手で取材時間が足りないほどでした。インタビューを通して、素材へのこだわりとフレンチへの追求心、真面目なお人柄を感じ取っていただければ嬉しいです。アンバーコートでは定期的に「ワインパーティ」を開催されており、ワインと料理のマリアージュも好評とのことです。ぜひ足を運んでみてくださいね。(文:西井/写真:山本)

ホテル日航プリンセス京都 カフェ&ダイニング アンバーコート 料理長 西村誠介さん

1976年生まれ、京都府京都市出身。趣味はハーレーとクワガタ採り。毎年夏になると京都府内の山へ登って、クワガタ採集を楽しんでいます。ホテルのスタッフとも一緒に採りに行くことも。

ホテル日航プリンセス京都 カフェ&ダイニング アンバーコート

京都市下京区烏丸高辻東入高橋町630番地
TEL 075-342-2156
定休日 無休
営業時間 朝食:午前7時~午前10時(ブッフェ)、午前7時~午前11時(午前11時LO、コース・アラカルト) ランチ:午前11時~午後2時半(LO) ディナー:午後5時~午後9時半(午後9時LO、※コース料理午後8時半LO)

https://www.princess-kyoto.co.jp/

※掲載内容は取材時のものです。最新情報は念のため店舗公式の情報をご覧ください。