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歴史を次世代へ、100年続く絞り染め専門店「片山文三郎商店」

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京町家が数多く残る四条烏丸界隈。蛸薬師室町の通りを歩いていると、ひときわ目立つ白い暖簾を見つけました。ここは1915年から続く絞り染めの専門店「片山文三郎商店」。ここには、絞り染めのイメージや世界観を変える、斬新なアイテムが並んでいます。四代目にものづくりに込めた想いなどをお聞きしました。

もがきながら見つけた、絞り染めの新しい道

――今日はよろしくお願いします。実は、以前SinQで取材に伺った山城さんに片山文三郎商店さんを紹介していただきました。山城さんとはどういったご関係なんですか?

以前、生地を買わせていただいていたんです。山城さんもいろんなお店とコラボをしていたので、うちで絞り加工をして商品開発をしたことなどがきっかけで、いまも繋がっています。

――そういう経緯があったんですね。京都市内のお店の繋がりを知られてなんだか嬉しいです。それではさっそくインタビューを進めていきたいと思います。まずはお店の歴史から教えてください。

屋号でもありブランド名にもなっている曽祖父の片山文三郎が創業したお店になります。もともと曽祖父は滋賀県の農家の生まれで、丁稚奉公で京都にやってきました。奉公先が友禅の会社をしていたため、お店を立ち上げる際に別業界である絞りの世界に入ったと聞いています。

お店の2階には初代の残した資料などが展示されています。

――創業はいつ頃なんですか?

1915年です。最初の頃は資金もないので問屋のようなことをしていたそうです。次第に事業が進み始め、絞り職人とも仲良くなったことなどから、ものづくりをするようになりました。祖父である二代目までは着物を扱っていたんですが、だんだんと着物を着る機会自体が少なくなっていって。三代目の父の代からは、着物以外の商品も扱うようになりました。

――着物以外の商品とは?

最初はインテリア製品。テーブルランナーや暖簾など。基本的に絞り染めは、生地に糸をかけたあとに染めることで、「染まる部分」と「染まらない部分」を生み出す技法です。当店もそれに倣って、染め上がった布を伸ばし、柄として見せる商品を生み出してきました。ただ、着物を着る機会が減ったことなど時代の流れに合わせて、現在のような立体感のある商品にも力を注ぐようになりました。

ここに並ぶのは立体感が特徴のバッグ。色や形はさまざまです。
一般的な「絞り染め」とはイメージの違う斬新なデザイン。

――それで斬新なアイテムが生まれるようになったんですね。それがお父様の代ですか?

そうですね。時代に合わせて、というよりはもがいた中で道を見つけていったんだろうな、と。着物だけを扱っていたら事業継続出来ないかもしれない、という危機感を抱きつつ、さまざまな商品が生まれてきたんだと思います。現在は、絞り染めの技法を使ったインテリア製品やファッションアイテムなど商品数も増えてきました。

――店内に置かれているアイテム、先ほど拝見しました。カラーバリエーションも豊富で、アイテム数も多いですね。何種類くらいあるんですか?

分からないです(笑)。だいたい1000〜2000種類くらいですね。

――そんなにですか! 想像以上の数でした(笑)。定期的に新商品出されているんですか?

絞り染めって、製作時間がものすごくかかるんです。デザインを出して、絞る箇所を決めて、手作業で糸でくくって、職人さんに依頼して染めてもらって…。着物だとだいたい1年半から2年くらい。そういった工程などを踏まえ、シーズンごとに商品を出すってことはあまりしていないです。出来上がったタイミングが新商品の発売タイミングですね。

「熱狂的なファンを作れるんじゃないか」

――四代目のこともお聞きしていきたいです。お店を継がれたのはいつ頃ですか?

まだ父が現役で社長をしていますが、私が店に戻って来たのは13〜14年ほど前ですかね。。

――大学を卒業されてから一般企業に入社されたんですよね。

そうなんです。大学では電子工学を学んでいました。私が中学生の頃、ポケベルやPHSなどが流行りだした頃で、「今後IT業界が伸びていくだろう」と思って、若い頃からその勉強をしていました。

――卒業後はどんな会社に就職されたんですか?

食品業界です。そこでは「商売とはなにか」みたいなことを学ばせていただきました。食品業界なので季節ごとのイベントに合わせた企画展開を行うんですけど、お正月があってバレンタインがあってクリスマスがあってお歳暮があって…って十数年同じような流れを経験し、他のことにも挑戦してみたいな、と。

――それでご実家に戻られたと。

そうですね。正直、若い頃は「うちの商品って誰が使うんやろう」って思っていたんです。絞り染めって「渋い」ので。ただ、「他のことにも挑戦してみたい」と思ったタイミングで改めてうちの商品を見たときに、「これ、やり方によっては熱狂的なファンを作れるんじゃないか」って思ったんです。

広い店内。取材中も海外のお客さんが数多く訪れていました。

――なるほど。外から見たからこそ分かる視点なんですかね。

前の会社では、100人いたら99人は良いと思う商品を目指していかないといけなかった。それは至極当たり前のことだとは思うんですが、うちの商品は100人中5人に受け入れてもらえたら良いなって。あと、年を重ねたこともあり、「私が継がへんかったらこのお店なくなるんやろうな」みたいな気持ちもあって。

――お店を続けたい、という想いが芽生えてきたんですね。

続けたいなって意識よりも、「100人中5人のファンづくり」というところに可能性を感じました。

――分かってくれる人に分かるものを作りたい、みたいな気持ちですかね。

そう、そういうものを作っていきたい。

立ち寄ってもらえる店へ、リニューアルにかけた想い

――商品へのこだわりはありますか?

いまブランドを3つに分けようとしてるんです。漢字の「片山文三郎商店」と、「片山」と、「BUNZABURO」というブランドに。「BUNZABURO」に関しては、見た目の可愛さにこだわりを持っていました。スタイリッシュで可愛いものを、と。ただ、いまは可愛いだけではなく、手仕事の大事さを感じられるものを作っていきたいと思っています。

――商品はすべて手作業なんですもんね。それに、絞り染めの工程にものすごく時間がかかっているのは伝わりました。

はい。そういう部分は大切に、皆さんにも伝えていきたいですね。

――ありがとうございました。では、今後の展望や夢などを教えていただけますか。

あんまりないんですよね(笑)。というのも、2025年8月に店舗を改修したんです。京都の街中に京町家を残していることは、ものすごく価値があると思っているし、これからどんどんインバウンド客も増えていくだろうって。それに、このお店を綺麗にすることによって、「京都に行ったらこのお店に立ち寄ってみたいな」と思ってもらえるお店にしたいと漠然と思っていました。だから、もしも次の世代が継ぎたいと思ったときにお店を託せるように、自分の代で改装をしたいと思ったんです。

風に揺れる暖簾。改修を経ても、柱や建物は当時のものをそのまま使用。

――そのリニューアルを無事に終えられて、肩の荷が降りたということですかね。

そうです。いろんな方に「次はなにするの?」って聞かれるんですけど、私のなかで大きな仕事がひとつ終わったタイミングなので、今はゆっくりしようかなと(笑)。

――それほどリニューアルに力を注がれたんですね。

はい。この店は曽祖父の文三郎さんが木から選んだ建物なんです。畳を綺麗にしたり、仕切りを新しくしたりはしましたが、建物自体はほとんど変えていないです。初代の想いがうちの会社のアイデンティティなので。

「100人中5人に良いと思ってもらえるものづくりに可能性を感じた」との言葉に、文章を書く一人として心に残るものがありました。片山文三郎商店さんの商品、どのアイテムも可愛くて、身につけるだけで気分が上がりそうです。お近くを通られた際は是非立ち寄ってみてください。(文・写真:西井)

片山文三郎商店
京都市中京区蛸薬師通り烏丸西入ル橋弁慶町221
075-221-2666
無休(年末年始・夏季臨時休業あり)
10:00〜18:30
https://www.bunzaburo.com/home-jp

※掲載内容は取材時のものです。最新情報は念のため店舗公式の情報をご覧ください。