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いま京都でアツイやまとなでしこ!「京扇子 大西常商店」四代目若女将

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着物姿で京都を駆け巡る、大西里枝さん

昭和初期創業「京扇子 大西常商店」。松原通高倉を西に入る京町家に普段から着物の四代目若女将の大西里枝さんの姿があります。2016年に入社してから斬新な商品開発で注目を集め、その後も精力的に活動する彼女のバイタリティの秘密を探りにいきました。

大西常商店 商品
「夏扇子」「舞扇子」「茶扇子」「着物用扇子」「飾り扇子」…。扇子と言っても実は用途に合わせて様々な種類がある。 

大学卒業後、一般企業を経て家業へ  

――里枝さんは大学卒業後、一般企業に就職してから家業を継がれたのですね。

いずれ戻ってくることは頭の片隅にあったのですが、まずは外の世界を見たいと思って、なるべく大きい会社で仕事を経験したいとNTT西日本に就職しました。九州で5年間営業企画職として働き、結婚して出産で里帰りしている時に、改めて家業の商売を見た中で時代にあったやり方に変えれば業績も上がってこれからも商売していけるのではと思って継ぐことを考えました。      

――ご両親に伝えた時は?

えぇ〜、やめときや〜。みたいな(笑)。あまり先がないような商売をするより安定した大企業で働いた方がええんちゃう、と言われましたね。でも5年間、社会人経験を経て、自分の中で「いや、何とかなる」という変な自信と自負があって。 

扇骨を活かした斬新なアイデアのルームフレグランスを開発  

扇ルームフレグランス「かざ」
扇ルームフレグランス「かざ」。機能性はもちろん見た目にも美しい。 

――そして2018年に扇子の扇骨を活かしたルームフレグランスを開発されました。

扇子は夏の商売なので冬の需要を生む新しい商品開発が必要だと感じていました。扇子ってあおぐといい香りがするねって言われたことがきかっけで、調べると扇子用に薄く加工された竹が長く香りを保ち続ける特性があるとわかりました。それを最大限に活かす商品としてルームフレグランスを思いつきました。    

――アイデアを思いついても商品として形にするには苦労も多かったのでは?

やりたい形はイメージがあったので、デザイナーの方には細かな箇所まで何度もやり直しをお願いしました。ご迷惑をお掛けしたかもしれませんが自分が納得するまで妥協せずにやりました。   

――ルームフレグランスはヒットし、その後も香りの扇など開発が続きます。

ルームフレグランスでの商品開発の経験やそこで得た新しい販路を活かすことができるのでその後は商品化していくスピードが早くなりましたね。     

香りの扇「うつし香」
香りの扇「うつし香」。あおぐたびに香りと色が匂い立つ、扇子の形をしたハンディフレグランス。

伝統工芸の抱える課題。若い職人への支援をはじめる  

――さらに若い職人への支援として今年の9月から「ものづくり継続プログラム※」をはじめられました。きっかけは? 

伝統工芸の学校で技術を学び20代前半で社会に出ても、数年後に生活できなくて諦める人をたくさん見てきました。個人事業主として継続するには技術だけではなく経営やビジネスの知識が必要だと、そんなプログラムの必要性を言い続けると応援してくれるところがあり、協力を得てはじめることができました。 

※ものづくり継続プログラム…職人が事業を続けていくために必要な会計や値付け、商品企画、販売手法などのノウハウを伝えるセミナー講座

――里枝さんがこれまで培った経験とノウハウが若い職人の役に立ちますね。

あと来年には若い職人に少しでも環境面や金銭面で力になれるよう専用のシェアハウスとシェアアトリエをつくろうと思っています。    

――そのバイタリティと実行力がすごい!

いえいえ、助けてくださる方が多くて本当にありがたいです。応援してるよ、というだけでなく「何か手伝えることはある?」と具体的に助けてくださる方がいるというのは心強いです。自分が意識していることとしては声を上げることは心掛けています。      

大西常商店四代目若女将 大西里枝さん

――それはいつから意識されているのでしょう?

前職で学んだかな。大企業で大勢いるなかでいかに覚えてもらうか。待っていてもやりたい仕事ができない。そのために自分から発案したり、目立つような動きをするというのは優秀な先輩方を見て学びましたね。当時は十分に出来なかったのですが今はその重要さを理解して実践しています。       

――普段から着物を着ていることも目立つため?

もちろん、それもあります。分かりやすいので。こういう商売はそもそも人に覚えてもらえないと意味ないですし。あと京町家に洋服を着た若女将っていうのも何だかしっくりこないので貫いています。       

誰しもが楽しめる京町家での文化体験教室 

――ここでは文化体験教室もされていますね。

扇子に関わる伝統文化になるべく触れていただく機会を提供できればと思ってます。投扇興※、お茶席、扇子絵付け、あとお稽古としてお能や上方舞をやっています。 

※投扇興…江戸時代から始まったダーツのような遊び。蝶と呼ばれる的に向かって扇を投げ得点を競う。 

――どんな方が参加されていますか?

投扇興やお茶席は海外の方や日本の観光客に人気です。お能や上方舞のお稽古は四条烏丸界隈のサラリーマンやOLの方も多いです。どれも敷居は高くなくて誰でも参加できます。  

大西常商店外観
 
大西常商店レンタルできる広間
広間や茶室はレンタルスペースとしても活用できる。 

――色々なことをやっておられますが、これからやりたいことは?

いっぱいあります!30個くらい頭にあります(笑)。飽き性なのでずっと同じことをやるより新しいことをやりたいんですよね。例えばそうやな〜。スナックやりたいです(笑)。   

――スナックですか!

本格的な飲食店というわけではなくて月に何回か開店する「スナック里枝」!いろんな人と話ができるコミュニティの場って大事だと思うんですよ。貴重な情報交換ができたり、新しいプロジェクトがうまれるきっかけになったり。さすがに夫と子供がいるので毎晩は無理ですけど(笑)。「スナック里枝」のママやりたいな〜。里枝ママ。良い響きでしょ。どなたか、利用させていただける場所をご紹介いただけると嬉しいです!   

大西常商店 里枝さん

たおやかな着物姿からは想像できなかったのですが、実は中学から大学まで女子サッカーをしていたという。ちなみにポジションは得点という結果が求められるフォワード。確かにゴールまでの道筋を考え、味方にアピールしてボールを呼び込み得点を狙う姿を想像すると今の姿と重なっているようにも見える。これからも前線に立って貪欲に攻めの姿勢で色んなことに挑んでいくに違いないはず。スナックができたら常連客になろうかな。(文:加藤/写真:山本)

大西常商店 里枝さんプロフィール

大西常商店四代目若女将 大西 里枝さん 

1990年京都市生まれ。立命館大学卒業後、NTT西日本に就職。営業企画職として九州での勤務を経て、結婚と出産を機に2016年家業である株式会社大西常商店に入社。お酒が大好き。最近はランニングにはまっていて毎朝5km走る。

京扇子 大西常商店

京都市下京区松原通高倉西入る本燈籠町23 
TEL 075-351-1156
定休日 夏季(4-8月)無休 冬季(9-3月)日曜・祝日
営業時間 10:00~18:00
https://www.ohnishitune.com