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辻森自転車商会 辻森さん

自転車の看板がトレードマーク創業から3代目の自転車店「辻森自転車商会」

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自転車は店主と街と人をつなぐコミュニケーションのツール  

自転車といえば小さい時からずっとお世話になっている乗り物。狭い路地が多い京都市内ならよく見かけ、配達や通勤通学にもなくてはならないものです。人々が多く行き交う東洞院六角の四辻を歩けば古い自転車が看板のお店があります。「辻森自転車商会」さんにお話を聞きました。 

辻森自転車店舗外観

おばあちゃんの家を残したかった   

――とても歴史を感じる町家の建物で素敵ですね。お店はいつからあるのですか?

ありがとうございます。そうですね、創業は明治末ごろで曽祖父が始めました。私で3代目になります。      

――3代目と代々後を継がれているのですね。いつから継がれたのですか?

当初は継ぐつもりはなくて、まったく違う仕事をしていたんです。祖母の弟が2代目として営んでいたのですが体を患ってしまい、店をたたもうかという話になっていました。

辻森自転車店舗ツール
壁には先代が使っていた工具が並んでいる

――それは大変な状況だったんですね。それで決断に至るのですか?

私自身、今の仕事をこのまま続けるかを悩んでいた時期でもあって、たたむのであれば自分に継がして欲しいとお願いしました。ところが両親ともに私がそう言うのをとてもびっくりして。 

――え、そうなんですか?宮本さんはとてもフレンドリーで自然な雰囲気に感じます。

前職は営業でしたが対外的な接客も少なく性格的にも店を背負ってやっていけないんじゃないかと思われていたみたいです。 

今でこそ様々なサイクルショップがありますが、何年も前の自転車屋さんといえば、おじいさんが店頭で新聞を広げてお客さん待ちしているような印象が強かったんです。始めた当初、人に職業を聞かれた時に「自転車屋」と答えると驚いた顔をされました。また、お店を数ヶ月閉めていたのでお客さんがなかなか戻ってこなかった時期がありました。そういった意味もあり、すぐ辞めるだろうって思っていたみたいです(笑)。でも自転車に関しては乗ることも部品をいじることもすごく好きだったので自分としては大丈夫だろうと。 

辻森自転車作業中

 ――好きなものを仕事としてやれるのは素敵なことですね。

そう感じています。自転車が好きというのもあるのですが、実はとてもおばあちゃんっ子でした。この自転車屋は祖母が生まれ育った家であったこともあり、どうしても残したかったんです。

時が流れてもずっと変わらない安心できる存在に   

――おばあちゃんと自転車とこの町家は宮本さんにとって大切なものなのですね。

そうなんです。だけど建物が古いので耐震的に危なく、そのままにしておくと少し大きな地震が来るともうもたいない状況でした。最近耐震工事をしたのですが大工さんにはできるだけ使える部分は残してもらうようにお願いしました。   

――とても思い出深い家ですものね。

おばあちゃんとの思い出もあるのですが町家で残す意義を感じています。このあたりでは残っている町家は本当に少なくなってしまって、見渡す限りうちと向かいの一軒。年配の方などはこの建物を見て昔のことを思い出す人が多く、町家は歴史でもあり、残す貴重な存在だと思います。   

辻森自転車店過去1
辻森自転車過去2
昔の東洞院通。まだ町家がたくさんある風景

――私もそう思います。それに変わらない風景を見るとどこか安心します。

ずっと変わらずいる、この町家がどこか遠くから見守るおじいちゃんおばあちゃんのような安心する存在でいてほしいなと。なおさらこの姿を後世にまで残しておくべきだと思っていて。    

――安心するという部分でいうと、自転車屋さんは町医者のような存在でもある気がします。

あ、そうかもしれませんね。この仕事は毎朝「おはよう」とか夏場など店頭で修理作業していると「暑つそうやなー」って何気ないコミュニケーションがあります。この仕事は小さいお子さんからお年寄りまで本当に幅広い年齢層の方と関わることができ、周りの方々にとっていつもと変わらない存在だと嬉しいです。    

時代とともに求められる自転車  

――店舗の一部がコーヒーショップなんですね。 

ブルーボトルコーヒーさんに入っていただいています。お話をいただいた時に、この町家のままの姿で展開してくれるならとお伝えしたら快く受けていただきました。地域密着的な考え方が共通の価値観だと感じています。  

――コーヒーと自転車。とても面白い組み合わせですね。

一見全然違うものに思いますよね。今でこそイベントができない状況で観光客も少ないですが、何か一緒に取り組めるのではないかと思っています。    

ブルーボトルコーヒー

――イベント期待しています。コーヒーを飲みながら自転車の修理を待つなんてことも。

昔には考えられないことだと思います。創業当初は呉服店や出前の需要が主でした。私が店を継いだ20年前は、通勤通学などの実用的な自転車しかなく、電動式やスポーティーなタイプはここ最近のことです。自転車や街の変化を上手に受け入れるのも大切だと感じています。実は、この店舗の奥に部屋があるのですが今後、レンタルスペースにして貸し出す予定です。この町家を介して色々なつながりができればと考えています。

辻森自転車店冊子

――まさにコミュニケーションの広がる場所ですね。自転車店としても宮本さんの姿勢そのもの。今後の展開などあれば教えてください。

東洞院六角はたくさんの人が行き交う場所です。この町家がみなさんにとってのHubになればいいなと思っています。そんな思いから、この町家をこれまでの100年これからの100年に向けたプロジェクトとして「Kyoto Hyaku100」と名付けました。 

また最近は健康志向の流れからアウトドアをする方が増え、うちでは国内の方でレンタルサイクルを利用する方も多くなりました。ブランドもののちょっといい自転車で湖畔を走るのはとても気持ちいいですよ。今後はルートを決めてみんなで走るイベントなども展開していきたいと思っています。 

辻森自転車自転車
ハイブランドのレンタルサイクル

自転車が看板のシンボリックな建物が、多くの人が行き交う東洞院六角で今日も佇んでいます。おばあちゃんとの大切な思い出を残したい。とても気さくで素敵な笑顔が印象的な宮本さんでした。(文:山本/写真:木村)

宮本さん

辻森自転車商会 店主 宮本大輔さん 

1975年京都生まれ。地元京都で育ち自転車屋を営む。スポーツが好きでゴルフが趣味。この先の100年も町家を残したいという熱い思いを胸に日々自転車業を営む。

辻森自転車商会

京都市中京区東洞院六角上る三文字町
TEL 075-221-5732
定休日 3月~11月無休(12月〜2月は日曜日・祝日定休)
営業時間 9:00~18:00
https://tsujimori.jp/

※掲載内容は取材時のものです。最新情報は念のため店舗公式の情報をご覧ください。