オーナーの創作意欲が詰まったスポーツ用品店「NUPLI」
作ることを楽しんでいるのが店内を見渡せば伝わってくる
スポーツ好きなSinQスタッフが念願のスポーツ用品を扱うお店を取材。烏丸仏光寺を2ブロック西へ進んだ先にある小さな路地先のお店NUPLI(ヌプリ)のオーナー中野さんを訪ねました。
好奇心から突き進めたプロボーダーへの道
――中野さんはプロスノーボーダーとのことですがずっとボードされているのですか?
最初からスノーボードではなく、スキーとの出会いが始まりでした。子供の時からスポーツが好きで、高校生の時に山岳部に所属していました。僕は顧問の先生が好きでよくスキーを教えてもらいました。そして冬合宿は決まってスキーだったんです。スキーにはまり、普通に滑ることができるとコブ(凹凸)を攻めたくなりました。それができるとジャンプしてみたいと、どんどん突き詰めていったんです。やがては夜行バスに乗って志賀高原なんかによく行っていました。
――スキーにすごくのめり込んでいたのですね。
そうなんです。でもそんな時、ちょうど海外からスノーボードのブームがやってきて、たぶん長野県の栂池(つがいけ)に行った時にゲレンデをサーフィンのように滑る人を見かけたんです。当時高校生だった僕は「なんだあれ?」って衝撃を受けました。それがスノーボード。まだ当時は全然やっている人もおらず、夢中でスノーボードのことを調べました。
――誰も乗っていないもの。雪の上でサーフィンみたいなのがきたら驚きますね。
自分が新しいものが好きなのもあります。挑戦してみたい!ってなりました。シーズンが終わったら早く滑りたい衝動に駆られて。日本がシーズンオフになったら、色々調べて海外で滑ろうと日本を出たり、次のシーズンにはより長く滑るために国内の山にバイトとして何週間も住み込みで働きました(笑)。
――スノーボードの魅力に魅せられ山籠りですか、すごく引き込む力がある。
とにかく早く上手くなりたい一心でした。兵庫県の山のバイトで知り合った人が、京都でショップの店員さんをされていました。冬にはゲレンデのバイトで山にこもるのはよくあって。
そしてその方から京都のショップが主催する「スノーボードツアー」に誘っていただきました。そこで知り合った社長に「ライダーとして頑張ってみたら」と後押しいただき、そこからどんどん話が進んでついには大会に出るようになりました。
――今は現役を引退されておられるのですね。
そうです。今は競技を離れて人に教えることが多いです。スノーボードには少年野球のようにチームが大小存在し、特に冬場が多いのですが国内や海外に希望する下は小学生から大人まで毎年ツアーを組んで合宿に行きます。
――十何人か連れて行くんですよね?大変じゃないんですか?
そうですね。(笑)でも特に子ども達が好きだし、教えるのが好きです。特に小学生の子どものこころを掴むのが好きですね。一人一人違って面白いです。例えばどうやったらこの子のやる気スイッチが入るのだろうとか。
――教えてもらっている子どもたちも、気にかけてくれる中野さんに見てもらっていると安心ですね。
ただ僕の場合、面倒を見ているというよりは同じ目線でやっているかも(笑)。技術的なことを教えることも大切ですが、もし初めてゲレンデに来て不安そうにしている子がいたとして、気にかけたり後押ししてやる気になってくれたら嬉しいです。第一にやっぱりスノーボードを好きになってもらいたいですから。
何人も連れてゲレンデに行った時に気持ちが下がっている子がいるのはよくあって、そこに気づいてあげる事を大切にしたいです。
驚いてもらえると嬉しい
――お店にはスノーボード以外にスケードボードなども取り扱っておられますね。
そうですね、スケートボードはスノーボードのシーズンオフの時にやっていて通称「ヨコノリ」と言われます。ボードを年中やりたいという思いから自然に取り扱う流れになりました。スノーボードのようにライセンスとるほどではないですが、ちょっとした買い物なんかは自転車を乗る代わりにシャーとスケートボード使っています。
――場所が違うけど滑ることは同じでなんですね。なんでも、自転車を作られるとか。
そう、基本的に作ることが好きなのでDIYというか色々作っていて、いつも木工で何かを作っていたのですが、以前からずっと鉄を扱って何かやりたいなと思ってたんです。自転車屋さんでバイトしていたことがあり修理などして日々過ごしていると「ピスト」というペダルと車輪が固定された自転車に出会いました。そして魅了され購入しました。
――やると決めたらやはり。
それはもうどうしてもやりたい。一心で調べてみたらあったんです。自転車のフレームの溶接を教えてもらえる「フレームビルディングスクール」というものが。ボストンに。
――え!海外ですか。フットワークが軽い。
そう(笑)何週間かの短期間でしたが、2、3回別の場所にも教わりにいきました。メーカーは別としてそういった溶接ができる人が少なかったんです。人と違うことがしたいって常々思っていて。溶接ができれば他にも家具も作れるし可能性が広がると思っていて。
――そうだったんですね。ずっと気になっていたのですがこの椅子、発想が面白いですね。
ありがとうございます。サドルが椅子になっていておまけに小物をおけたらどうだろう?って。他にもこの店の至るところに手を加えているのですが、あったら面白いかな?と思ったら、作っちゃいます。
――お店の中のものを見ていて驚いたり楽しくなりました。
そうなんです、驚いてもらえたり喜んでもらえたりするのが好きだと思います。スノーボードチームの子どもたちもツアーに来る前よりできることが増えて喜んでくれたりするととても嬉しいです。
店舗経営に子どものスノーボード教育に色々と取り組まれている中野さん。NUPLIにはカフェスペースもありオーナーのアイデアがたくさん詰まった空間でした。小さい頃に教えた子が今活躍していて成長していくのを見るのが嬉しいとおっしゃっていました。 (文:山本/写真:上山)
NUPLI 店主 中野 智裕さん
1971年6月香川生まれ小学生まで東京で育つ。子供の頃からものを作ることが好き。海外で覚えた溶接の技術で棚も看板も作る。「次は何作ろう、あったら面白いかも」と思うものをネットで探すのが至福の時間。
弟は映画監督 中野量太氏。
NUPLI
京都市下京区菅大臣町180-1Vadeビル1F
TEL & FAX 075-343-6671
定休日 日曜日・月曜日
営業時間 14:00~20:00
https://www.nupli.shop/
※掲載内容は取材時のものです。最新情報は念のため店舗公式の情報をご覧ください。