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イタリア人からのオーダーも! 「京すだれ本舗 久保田美簾堂」

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こだわりの空間にはオーダーメイドのすだれを!六代目久保田真司。 

ホテル日航プリンセス京都のすぐ近くの東洞院通りを歩いていると、すだれが掛かっていて印象的な町家があります。そこは明治16年創業のすだれの専門店。普段目にすることのない現場を見学しながら、職人である六代目久保田真司さんにすだれに関するあれやこれやを聞いてきました。

久保田さん作業中01

小さい頃から見てきて自然と継ぐものかと。  

――明治16年創業以来この地でずっと続けて来られているのですね。 建物も当時のものですか?

そうですね。137年間創業以来ずっとこの地ですだれを作り続けています。店の奥はその時より増築していますが店先の建物は創業以来ほとんど変わっていません。昔の写真を見ると店頭のディスプレイのやり方が変わっていたりしていますが店構えは今と同じです。     

――歴史を感じますね。そんな歴史ある久保田美簾堂の六代目である真司さんはいつから働いているのですか?

27、8歳からです。すだれ職人としては10年ほどのキャリアになります。それまでは違う仕事をしていました。四年制の大学を卒業して、旅行会社に就職して営業をしていました。

――旅行会社に勤められていたんですね。ではどうして継ぐことになったのでしょう。

実はなんとなく継ぐことはずっと頭にありました。若い頃はすだれを作りたいという強い意思はなかったのですが 30歳になったら家業を継いでいいかなと思っていました。小さい頃から見てきて自然と継ぐものかなと思ってましたし、いずれやるもんやなと。だから継ぐときまでに好きなことに時間を使おうと思って、旅行が好きだったので旅行会社に勤めていました。特に父から何か言われたことはないですね。実際に家を継ぐきっかけになったのは、四代目である私の祖父が歳で働きづらくなり引退したこと。そうなると一人少なくなって人数的に仕事が回らなくなることと、旅行関係の仕事もある程度満足したので、そんな事情とタイミングが重なって想定していた30歳より前に継ぐことにしました。 

――すだれ作りはそれから覚えたのですか?

それからですね。すだれ職人として父に一から仕事を教わりました。
今になって少し残念だと思うことは四代目の祖父とは仕事をしていないことです。私と父とはまた違った感覚や選択肢があったのか一緒に仕事をして側で見てみたかったですね。 

久保田さん

お客さまの用途に応じて空間にふさわしいすだれを提供する  

――久保田美簾堂さんのすだれの特徴は。

すだれ専門でオーダーメイドというのがいちばんの特徴です。素材にこだわり、丁寧な作りで、 空間に対してそこにふさわしいサイズで設置する。外から見ても外見が綺麗に見える。お客さまの用途に応じてすだれを提供するという専門店としてできることが強みです。久保田美簾堂では今、父と母と私、妹の4名でやっています。   

――ちなみにすだれの専門店は京都に他にありますか?

京都で10軒くらいあります。うちはすだれ全般を扱っていますが、お店によっても専門が分かれていて、例えば外にかける軒簾(外掛け簾)、部屋内にかける座敷簾、神社仏閣に納める御翠簾(おみす)とかそれぞれすだれ屋さん毎に特徴があります。  

――京すだれとは他とは違うのですか?

京都は街が小さく、隣同士やお向かいさんが近いこともあって、丸見えなのを隠す目的であったり、盆地で蒸し暑いから空気を通すためにと生活に身近なものとして発展してきたことがあると思います。そのような特殊な環境で培われたすだれの製作技術、見せ方や空間の使い方、それらすべてが京すだれなんだと思います。    

久保田美廉堂看板

外国の方からのオーダーは新たな発見があって学ぶことも多い 

――お客さまはどういう方が多いのですか。 

昔からあまり変わっていなくて自宅用に個人の方や割烹料理屋、旅館の方、それに神社仏閣からと話があります。あと大工さんや設計士さんからの依頼もあります。 最近では海外からの問い合わせもありますね。  

――外国の方からのオーダーも受けているのですか!

外国の方は先入観がないので自分の好きな組み合わせをオーダーされます。例えばすだれの周囲にある裂地(きれじ)という布の色も白黒という染め方は日本人にはお葬式などイメージするのでやっていませんでした。でも、あるイタリアの方は自宅のタイルが白黒なので、それに合わせたいということで裂地(きれじ)を白黒にオーダーされたんです。これもいざ作ってみると今までにないモダンなすだれが出来上がりました。外国の方と仕事をすることは、はじめは戸惑いもありましたが新たな発見があって学ぶことも多いです。   

――最後に仕事のやりがいと今後の展望について教えてください。

空間に合ったサイズのものを考えて作って納めたときに、思った通りだと達成感があります。普段から街を歩いていてすだれを見たときに自分の中でこうした方が良いと思ってイメージしてみたりしています。 すだれという形自体は変えづらいものです。横は真っ直ぐな棒状。縦は糸。それがすだれの形状でそれしか作れないのですが、 サイズや素材を変えることで違った表現ができます。外国の方との仕事で発見したアイデアも組み込んで 今のおうちのスタイルにも合ったものを作っていきたいと思っています。時代が変わっても生活の中にすだれがあるようにしていきたいです。     

久保田さん作業中03
久保田さん作業中04
 

今回取材をして材料の葭(よし)や竹にも様々な太さや色があり、また付属している金具や房などもパターンがあることを知りました。取材途中お客さまと打合せされていましたが、空間を活かす存在としてすだれをイメージして提案している姿が印象的でした。現代のライフスタイルにもマッチするすだれをお探しの方は久保田美簾堂に相談されてみてはいかがでしょう。  (文:加藤/写真:木村)

久保田真司さんプロフィール

久保田美簾堂  六代目 久保田 真司さん 

1981年生まれ 。大学卒業後、旅行会社に勤務。 その後、 家業のすだれ屋にて、五代目の父のもと、現在修行中。大学時代に始めた茶道を活かし、すだれ越しの景色・透け感を実感してほしく、店奥の和室にてゆるりお茶会を催す。趣味は通りすがりの軒にかかるすだれの観察。またビギナーではあるもののキャンプ好きでアウトドアな一面も。

久保田美簾堂

京都市下京区東洞院通仏光寺下る高橋町615 
TEL 075-351-0164
定休日 日曜日・祝日
営業時間 9:00~18:00
http://www.birendo.jp/  

※掲載内容は取材時のものです。最新情報は念のため店舗公式の情報をご覧ください。