1. HOME
  2. 食べる
  3. 添加物の安全性を説く!?京漬物屋「井上漬物店」の五代目
食べる
井上漬物店メイン

添加物の安全性を説く!?京漬物屋「井上漬物店」の五代目

食べる

添加物や発酵など、気になることはトコトン追求!  

油小路通り東の松原京極商店街にある創業明治5年の京漬物「井上漬物店」。五代目の井上昌則さんは、松原京極商店街振興組合の理事長でもあります。情報が溢れる中、添加物の安全性や必要性について非常に熱心に勉強されていて、最近ではその講座もされています。そこに至った経緯やこだわりなど、お話を伺ってきました。 

井上漬物店店舗前

産地にこだわらず、その季節で一番美味しいときの野菜で仕込む  

――お店は創業明治5年で約150年だそうですが、昌則さんは何代目ですか?

僕は五代目で肩書きは販売主任。ちなみに父が四代目でうちの社長、母は副社長ですね。あと僕の奥さんの家族4人でお店をしています。      

――商品のラインナップを教えてください。

定番のぬか漬けやたくあん、しば漬け、ゆず大根、ピクルスなどなど取り揃えています。冬に向かうこれからは千枚漬けのシーズンなので仕込みで忙しくなりますね。

井上漬物店商品いろいろ

――京漬物を製造販売されているということは、京野菜を使っているのですか?

もちろん京野菜を使っているものもありますが、うちは使用する野菜の産地にこだわってはいません。昔は近郊で取れた京野菜を使っていましたが、今は流通が発達し、全国各地から旬で新鮮な美味しい野菜を仕入れることができますから。 
作り方は昔からの製法です。もちろん基本的なことは代々受け継がれていますし、生まれてずっとここで育ち、食や文化や気候などずっと身になじんでいる。そういった人間が作った漬物は「京漬物」になるのだと思いますね。

 

五代目の井上昌則さん

――定番のものだけでなく、珍しい野菜でも作られているんですか?

協力していただいている農家さんが数軒あって、ときどき「こんな野菜あるけど漬物にどう?」とお話をいただき、チャレンジすることがあります。今は滋賀の余呉(よご)で作られた「山かぶら」のぬか漬けと塩漬けを提供しています。この山かぶらを出荷している農家さんは日本でここだけという希少なものなんです。色も味もとっても濃いんですよ。  

――(ぬか漬けの試食をいただいて)濃い!口の中に余韻が残りますね。これは日本酒が欲しくなります!

日本酒、絶対合いますね(笑)!もちろんご飯のお供にもいいですよ!  

井上漬物店の樽

やったことない人でも「ぬか漬け」にチャレンジして欲しい  

――井上漬物店さんでは「ぬか漬け」と「発酵糠床」を提供されていますが、この二つの「ぬか」は違うものですか?

違いますね。うちの「ぬか漬け」は、流通の過程で発酵が進んでしまわないために、乳酸発酵があまり進んでいない「ぬか」で漬けています。というのも、発酵が進んだ「ぬか」を使うと、今日買ったお客様と明日買うお客様で味が異なってしまうというように、品質が安定しないんですよ。 

「発酵糠床」は逆にしっかり発酵した糠床です。これで漬けた商品は流通させていません。ご自宅でぬか漬けを作って見ることで発酵を体験してもらいたくて販売しています。ぬか漬け体験キットのようなものですね。 

――それなら一度チャレンジしてみたいです!

ぜひぜひ。毎日かき混ぜたりと正直手間はかかりますが、とりあえず1年は育ててみてほしいですね。もちろん失敗することもあります。その時は捨てて再チャレンジしてください。うちの発酵糠床は冷蔵庫でなく常温で大丈夫なので、夏や冬を通して菌がグルグル変わるんです。季節ごとの変化を楽しんでいただき、糠床を通じて四季を感じて欲しいです。   

――お店で糠床講座もされているとか。

そうなんです。店内での本格的な糠床作りや座学、漬物試食などをしていただき、作った糠床は容器も用意しますのでお持ち帰りいただけます。一年間の糠床サポートと管理方法などがわかるマンガ冊子もついています。次回は来年に開講予定です。    

井上漬物店のれん

食品の「添加物の安全性と必要性」を伝えたい  

――SinQでご紹介したLisasさん(2020.11/11掲載)で行われた「添加物講座」に参加させていただきましたが、とても興味深かったです。 

今回の講座では、よく話題になる「添加物はダメ」という内容でなく、添加物の安全性と必要性についてお話しさせていただきました。今の情報化社会の中で、食の安全について消費者の不安を煽るような情報が溢れていますよね。食品にとって添加物がどういったもので、何のために入っているのか、なぜあるのかを知っていただきたいと常々思ってFacebookやブログで発信していたところ、共通の考えを持つLisasさんに添加物講座の機会をもらったんです。
よく漬物には添加物が入っているのではと聞かれるのですが、うちでは安全に品質を保つためにほんの少し入れています。無添加にこだわる余り、劣化し他ものを食べて結果食中毒というのは、本末転倒ですよね。また近頃「無添加」と表示するために、添加物と表示しなくて良い添加物のようなものが多く加えられていることもあります。結局、用法と用量が大事なのです。正しく怖がってもらいたいなあと思っています。   

品質表示のラベル

――受講後、添加物に対するイメージが少し変わりました。

受講した上で、やっぱり添加物はよくないよねと思われる方もいらっしゃると思います。「入っているから危険!入ってないからOK」と短絡的にならないように、商品を選ぶ時の一つの価値観となればいいですね。   

――今後やりたいことはありますか?

糠床のように日本食には発酵食品がいろいろありますが、そんな日本食の凄さや魅力を体で体験してもらいたいので、漬物を通じてそのお手伝いがしたいと思っています。また「添加物講座」は今後もやっていきたいですね。僕は情報だけお伝えしますので、事実を知っていろいろ考えて欲しいし、せっかく食べるなら楽しく食べてもらいたいですよね。店としてはもっといろんな農家さんと繋がって、独自の漬物をもっと作ってその割合を増やしていきたいですね。     

五代目井上昌則さん

――ところでお店の中にピアノがあるんですね!弾いたりされるんですか?

僕が弾くのではなくて、ときどきここでライブを開催しています。学生の頃にバンドを組んでいたのですが、その頃の友人でプロとして活動しているミュージシャンや二胡の演奏、シャンソン歌手の方などいろいろ出演してもらっています。観覧無料ですので、開催していたら、商店街でのお買い物途中にでも立ち寄ってもらいたいですね。「松原京極商店街振興組合」のFacebookで告知していますのでチェックしてみてください。      

井上漬物店店内のピアノ
松原京極商店街のキャラクターを使った看板

井上さんの講座の受講後やお話を聞いた後、今まであまり気にしなかった成分表を見ることが多くなりました。それは恐れて避けるためではなく、自分で選んだものには何が入っているのか私も興味を持ったから。あふれる情報に流されることがないように、少しずつ学んで自分に合うものを取捨選択していけばいいのだなと思いました。  (文:上山/写真:山本)

井上漬物店井上さんプロフィール用

井上漬物店 五代目 井上 昌則さん  

1981年京都生まれ京都育ち。地元の松原京極商店街振興組合の理事長。学生時代バイクが好きでバイク店で働いていたが、父である四代目がした接客中の漬物の話に興味をもち家業に就く。何事も追求することが好き。趣味はバイク、ギター。ちなみに奥様の弥生さんは元バイク仲間で管理栄養士の資格を持つ。 

井上漬物店 

京都市下京区油小路通松原上ル麓町657 
TEL 075-351-1451
定休日 日曜日・祝日
営業時間 10:30~19:00
https://www.inoue-tsukemono.com/  
ブログ  https://ameblo.jp/inotuetukemono/

※掲載内容は取材時のものです。最新情報は念のため店舗公式の情報をご覧ください。