世界で評価される独創的な帽子が生まれる場所「millinery mino」
ものづくりへの情熱が溢れ出る帽子デザイナーminoさん
松原通にある、足を踏み入れるのに躊躇しそうな雑居ビル。その3階には異国を思わせるおしゃれな空間があります。そこは個性的でデザイン性が高い帽子として支持されている「millinery mino(ミリナリィ ミノ)」のアトリエ兼ショップ。ブランドを立ち上げ、活動するデザイナーminoさんに話を伺いに行きました。
独学ではじめた帽子づくり
――ここは外国にいるようなおしゃれで素敵な空間ですね。いつからはじめられたのですか?
帽子デザイナーとしてスタートした2013年からここで活動しています。
――お一人で活動されていますが、帽子づくりはどこかで学んだのですか?
それが全くの独学なんです。専門学校にも行っていないし、どこかの師匠に弟子入りしていたりもないです。最初何を揃えたらいいかもわからず、同業の先輩に教えていただいたり、自分で調べて試行錯誤しながらやってきました。
――えっ独学!凄いですね。ちなみに帽子はどういう工程でつくっているのですか?
当初は信頼できる帽子工場さんに製造工程の一部を依頼し、装飾などの最後の仕上げをアトリエで行なっていました。そのうち木型を使って一から帽子をつくりたいと思って自分でもつくりはじめたのが6年くらい前からです。今は状況に応じて両方のスタイルを使い分けています。
デザインの発想と材料へのこだわり
――ひとつひとつの帽子に個性的な印象を受けますがデザインの発想はどうしているのですか?
フラワーアレンジメントだったり、フランス料理の盛付け方や余白の活かし方からインスピレーションを得ることが多いです。急に思いつくのでそんな時は携帯で撮影したりメモしてアトリエに戻ってつくったりしています。
――なるほど。デザインのオリジナル性が高い秘密を垣間見た気がします。帽子のパーツも特徴的ですね。
はい!日本の材料だけでは自分のイメージする帽子ができなくて海外から仕入れることが多いです。材料によってイギリス、オーストラリア、アメリカ、ポーランド、チェコ、、、といった感じで様々な国から仕入れています。
――ものづくりのこだわりを強く感じます。何かきっかけがあったのですか?
うーん。きっかけというより私のルーツにあると思います。父がイタリアに行って独学で革職人になった人で、私が小さい時から簡単な作業ですけど手伝いをしているなかで最高級の革に触れていたり。ジャンルは違いますが本物の素材と深く掘り下げていくものづくりの姿勢に身近に接していたことは大きかったと思います。
――本物のものづくりが日常的にあったことが今に繋がっているのですね。
そうですね。父のことを尊敬しているのでものづくりの姿勢は共通している部分だと思います。帽子の材料の素材感や質感にこだわりがあるのもその影響です。
あと大叔父が日本初の彫刻専門のギャラリーを始めた人で、父に連れられてよく見に行っていたので海外の作家や作品に触れる機会がありました。アートな感性はそういう環境から身についていったのだと思います。
コンセプトにしていることは「個性があるけど品がある」
――帽子をつくる上でコンセプトはあるのですか?
「個性があるけど品がある」ということを意識しています。ただ派手で目立つというのではなく品があることが大事だと思ってつくっています。
――ところで「millinery mino(ミリナリィ ミノ)」というブランド名の意味は?
millineryは英語で婦人の帽子業のことです。海外では帽子のデザイナーや作家さんがmillineryの後に名前をつけてブランド名にするのは割とスタンダードなんです。以前はimageréel(イマージュレール)というブランド名だったのですが、お客さんからは名前のminoで通っていたので、ちょうど来年10周年なのでそれを機にブランド名を変えました。millineryという言葉はあまり日本で浸透していませんが名前のminoとmが続くのでかわいいなと思ってつけました。
――店内は帽子だけでなくヘッドピースも多いですね
はい!もっとヘッドピースを日本で広めたいと思っています!良いなと思っても買うのを躊躇する人がいるので身につけるハードルを下げたいです。
――多くの人はヘッドピースをつける習慣がないのでわからないと思いますが、帽子とは何が違いますか?
私は小さい帽子だと言っています。帽子より面積が小さいので、よりアートに近いデザインや派手な色でも目立ちすぎずワンポイントになるのでアクセサリーをつける感覚で普段使いできます。身につけることによってキャラクターができたり、自分の気持ちが上がったりするアイテムであることをたくさんの人に知ってもらえたらと思います。
ヘッドピースを普段使いできる感覚になってほしい
――帽子やヘッドピースはオーダーメイドもできるのですか?
はい!オーダーメイドもしています。最近はインスタを見ていただいた関西以外の遠方の方が、予約されて来店いただくことも増えました。依頼される方からは嬉しいことにデザインは自由にお任せという方も多いです。成人式の着物やこのワンピースに合うようにというオーダーで後はお任せというようなこともあります。
――商品を販売している場所はここ以外にもありますか?
WEBサイトにあるオンライン販売と定期的に色々な百貨店にも出店しています。このアトリエは私がいて、敷居も高くないので興味のある人はぜひ来て欲しいです。
注)アトリエ兼ショップは現在予約制
――色々な百貨店にも出店もされているのですね。
百貨店のなかでも日本一の売上とブランド力がある伊勢丹新宿店に出店することが夢だったのですが、2年前に伊勢丹新宿店バイヤーさんから出店依頼があったときは本当に嬉しかったです!しかもヘッドピースの依頼だったので嬉しさもひとしおでした。それから合わせて3度依頼があって、今年の8月も出店していました。
世界最大の帽子の祭典「ロンドンハットウィーク」主催者からオファー
――夢を叶えるのはすごいです!
実はもう一つ嬉しいことが今年あったんです!毎年ロンドンで開催される世界最大の帽子の祭典「ロンドンハットウィーク」主催者からオファーをいただいて出店しました。これもヘッドピースを評価してもらってのことでした。帽子の発祥の地である本場の人に認めてもらえたっていうことは自信にもなりました。
――活躍の場が広がっていますね!まだまだやりたいことがありそうです。
はい!このアトリエをリニューアルしようと思っています。展示と制作場所の仕切りをなくしオープンにして、制作風景を身近に感じてもらう空間を考えています。イメージは割烹屋さんのようなオープンキッチンみたいな感じです。制作風景も商品価値の一部として楽しんでもらえるような、そんな日本で唯一のヘッドピース専門店を目指しています!
いきいきと目を輝かせながら帽子づくりについて語るminoさん。着実に夢を叶えている理由は、ものづくりへの溢れ出る楽しさと情熱に他なりません。世界にも評価される彼女のつくりだす本物で独創的な帽子やヘッドピースを見るために、このアトリエに足を運ぶだけでも十分価値があります。 (文:加藤/写真:木村)
millinery minoブランドディレクター&デザイナー minoさん
千葉県出身。子供時代、革職人の父、生地屋を営みながら洋裁をしていた祖母、帽子デザイナーの叔祖母、美術画廊を営んでいた大叔父のいる環境に育ち、ものづくりやアートに興味を持つ。 10代の頃に描いていた絵を長靴にペイントしたレインシューズがヒット商品となり、その後5年間ものづくりをしながらアパレル業界に携わる。30歳で独立、帽子づくりを専業に。
millinery mino(ミリナリィ ミノ)
京都市下京区杉屋町283 松原クラタビル 3F 3A
TEL 075-203-9247
定休日 不定休
営業時間(現在予約制) 月曜日:14:00 ~ 19:00 土曜日、日曜日:13:00 ~ 19:00
https://imagereel.net
※掲載内容は取材時のものです。最新情報は念のため店舗公式の情報をご覧ください。